暗闇でも、さあ、駆け抜けろ

なんでも気ままに書き綴る。

染色 6/4 覚え書き

舞台染色を観劇してきた。

コロナで1度は中止になり、自担・正門良規の初主演舞台ということもありとてもドキドキしながらこの日を待っていた。

 

 

真未は深馬で、深馬は真未だったのだろうか。それが、私が終演後に真っ先に感じた感想だった。

濡場のシーンが真っ先に話題になっていたが、濡場のシーンの頃には作品に吸い込まれていたし、正門良規ではなく、舞台にいるのは深馬だった。

自慰行為も、原作のような描写なのかと想像していたがもっと苦しく、葛藤や混乱の延長としての自慰行為に思えた。キスシーンや絡み合うシーンも、エロよりも美しささえ感じた。

 

 

 

 

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ここからは自分なりの覚え書き。

文字通り書き殴っているので、時系列などはめちゃくちゃだと思う。思い出せるだけ文章にしているので日本語もめちゃくちゃ。

 

 

ベージュのチノパンに白のTシャツ、絵描き用のエプロン。

油絵を書きながら、でも、納得がいっていない様子。

女の子に電話をかけながら部屋に入ってくる北見。後ろでふざけながら北見と写真を撮る深馬。彼女の杏奈とは2ヶ月会っていない。秋に咲いた桜の話を思い出す深馬。秋に咲いた桜は春にも咲けるのか、しきりに北見へ問いかける。

 

映像作品のために風船を膨らませながら入ってくる原田。3人とも現実は見なければいけないが、学生の自由さや、なんでもいい、面白ければ、という美大の雰囲気の中で楽しんでいる様子。

そこへ杏奈から連絡が来る。家の近くまで来ているから会えないか、と。北見が勝手に返信し杏奈はコンビニでビールなどを買って来る。そこへ美大講師の滝川も部屋に入ってくる。詩をモチーフに絵を描く深馬に、同じ作風の写真集を渡す。滝川のゼミ室で飲む5人。滝川は帰り、北見と原田は酔っ払って寝てしまう。深馬の作品を見ながら密着する深馬と杏奈。対面で座りキス。しかし、原田の風船が割れてみなが起きてしまう。

 

場面が変わり、展覧会の日に。そのまま納得がいっていないまま展覧会に飾り、モヤモヤしている様子。就活スーツで展覧会に来る杏奈。それぞれの作品を見て回り、北見、原田、杏奈と共にまた戻ってきた時には作品が別物になっているかのように友人たちの反応が異なる。自分でも、自分の作品なのか分からなくなっている。なぜなら、真っ黒な服に身を包んだ何者かが手を加えているから。

 

モヤモヤしたまま街にグラフィティを描き始める。(登場時の服+ベージュのシャツ)全て書き終わらずに眠ってしまうが、起きた時には作品が完成されている。何者かが手を加えている。幾度か途中まで描き、寝てしまい、起きたら完成していることが続く。

ある日、わざと途中まで描き身を隠す。すると真っ黒な服の真未が現れる。

深馬は全て自分で最後まで描かず、これが完成だと形に残すことに自信がなかった。完成したと思っていても、恥ずかしい形で世の中に、後世に残ることが嫌だから。だから中途半端な状態で世に出している。それを真未が手を加えることで形にしているのだった。

 

子どもの頃から絵の才能を褒められ、絵画教室に通い、高校から美術予備校に通い、美大へ現役首席合格した深馬と、

親がいなく施設で育ち、アパートに一人暮らしをして固定概念に囚われず思うままに描いていく真未。

絵を描くことが嫌になったことある?と聞く深馬に対して、歩くことが嫌になった事がある?と答える真未。

真未は深馬に肩車を頼む。天井?についたシミをスプレーで吹き付けて消す。以降、真未の部屋のシーンではピンク色のスプレーの描写がある。

深馬は真未が自由で羨ましいと言う。真未は私が深馬の自由になってあげようか?と言う。私がいれば君はなんにでもなれる、と。深馬が真未を押し倒し、抱き合う。胸に顔を埋め、首や胸が絡み合う。深馬が上になったり、真未が上になったり。

自由な真未と絡み合う中で対になるかのように、就活スーツに身を包み面接を受ける杏奈。受け答えはしどろもどろで、面接慣れしてない感じ。

 

 

杏奈の家に深馬が来る。鍋の材料を買ってきたのでご飯にしよう、と、深馬が鍋の用意を始める。就活が上手くいかない杏奈。全然ダメダメで、と話す杏奈にそんなことない、大丈夫だ、と励ます深馬。手の大きい深馬が顔の小さい杏奈に頭ポンポンする。距離が近づき抱き合うが、鍋がふきこぼれる。火を止め、続きをするがインスピレーションが湧いたのかスケッチブックに何かを書き始める。深馬は取り憑かれたかのようにスケッチブックに描き続ける。

 

深馬の展覧会の絵が、有名なアーティストに認められて企画展への出品を依頼される。

美大講師の滝川が展覧会に呼んだ時に作品が目に止まったのだと言う。

 

深馬は変わらず真未と2人でグラフィティを描いていく。そのうちに、2人で描いた絵が注目され、メディアにも取り上げられる。真未が深馬の手を取り作品に手形をつけたものが6本指の手のひらに見えることから、「ポリダクトリー」の名前で広まっていった。

深馬と真未は一心同体で、互いの思考が分かるかのように、作品の完成が2人の共通認識であるかのように作品を一緒に創っていく。

 

真未の家で2人でいるシーン。真未がシャワーを浴びに行く間に深馬はスプレーを集めて、立てて、蹴飛ばしてたおす。何を思ったかスプレーを冷蔵庫に隠す。真未はシャワーから出てスプレーが1本ないことに気がつく。深馬は知らない、別の色でもいいんじゃない?今から買いに行こうか、と尋ねるが真未は唸るように泣き出してしまう。ただ事ではないと気がついた深馬はスプレーを返し、慰める。

 

2人で絵を描くことで深馬は生き生きと作品を描くようになる。

杏奈は様子が変わった深馬に違和感を覚える。スランプから抜け出し創作していく深馬だが、良くなった彼の理由が自分ではない、むしろ、スランプの原因が自分なのではないか、と悩む。就活が上手くいかないのも、杏奈を不安定にさせているのだった。杏奈は北見に相談する。北見は深馬にもっと杏奈を大事にしてやれ、と問い詰める。あんないい子他にはいない、と。

作成途中の企画展の作品を前に殴り合いの喧嘩になる。その喧嘩を、部屋に隠れていた真未がスプレーを吹きかけて止める。逃げる真未を深馬は追いかける。

 

企画展への作品を描いていると、ある日作品が壊されている。提出までは1週間。深馬の服は黒いパンツに白いTシャツ、黒のワイシャツ。腕にはスプレーの色がついている。

展覧会の作品を提出すれば、と滝川は言うが、展覧会の作品を更に向上させたものを所望しているのだからそれは違うと深馬は企画展への出品を諦める。

深馬は北見を疑う。

 

作品を壊した犯人は見つからないまま。ある日、ポリダクトリーがグラフィティを作成する映像が見つかる。深馬は真未に、俺たちの偽物がいると伝える。今までに作成したグラフィティへ2人で順に偽物を探しに行く。すると、偽物としてグラフィティにポリダクトリーを上書きしている人物を見つける。それは滝川だった。

 

滝川は、自分の夢や目標を次々と叶えていく深馬に嫉妬していた。自身の生徒が認められるのは嬉しいが、自分が美大講師のまま留まってしまうのが我慢できない様子。深馬が有名アーティストに認められたのも、きっかけは自分の作品を見せるために呼んだ事だったし、企画展への作品が壊された時も深馬は取り乱すことなく冷静でいた。もっと足掻け、諦めるな、と。

ポリダクトリーを上書きし、自分が行ったことにしようとする滝川。映像が夜に放たれ、自分がポリダクトリーとなることでこれまでの世間の話題や注目が全て自分のものになる気がし、何者かに変化できると思っている。深馬の作品を細かく分析し、論評したスケッチブックを深馬は見つけていた。

この言動から、深馬は企画展の作品を壊したのは滝川だと確信する。

 

この一連の映像を原田はカメラに収めていた。原田は入学してから友達がおらず、周りの人からも避けられていた。大学をやめようとした時に滝川に相談し、滝川は主席で入学した深馬と造形の才能で話題になっていた北見と友達になるように勧めた。有名な2人のそばにいることで、原田を見る周りの目も変わっていった。2人を利用していたのだ、滝川先生に頼まれてポリダクトリーの映像も撮っていたのだ、と。

また、何かに使えると思って、と原田は企画展の作品を隠し撮りしていた。そこには、真未が壊す瞬間が映っていた。

深馬は原田に、滝川がポリダクトリーである映像を公開するように伝える。

 

深馬は真未の元へ向かう。

グラフィティを一緒に描いていた時は一心同体のようだったが、いつしか同じ完成に向かう前に真未が先に動いてしまうようになっていた。

真未が企画展の作品を壊したのは、スプレーを隠された時のちょっとしたいたずらへの仕返しだった。真未は、深馬が絵を描くことを辞めたがっているように感じていた。父が倒れた時でも、企画展の作品が壊れた時でも、辞めるタイミングはいつでもあった、と。いつしか壊されるものだったのだから、真未が壊したのだった。深馬はそんなことを願ってはいない、と真未に叫ぶ。しかし真未は深馬が自由であることをお願いしたのだ、と言う。

 

深馬は壊れていく。真未の自由に染まっていくことから逃れるように舞台上を動いていく。息を荒らげ、うなりながら。最終的には倒れてしまう。

 

場面が変わり、ベッドで目が覚める深馬。熱中症で道に倒れ、通りかかった人が救急を呼んだのだ、1週間も眠っていたのだ、と傍らにいた杏奈が伝える。

 

しばらくして退院し、真未には会わずに杏奈の家に2人でいるようになる。腕に吹き付けたスプレーの色を落とし、真未との繋がりを断つ。

 

原田と北見がスーツを着、深馬は黒パンツにベージュのシャツ。3人でビールで乾杯。原田はデザイン会社に、北見は実家の出版会社に就職。深馬は単位を落とし留年。

滝川が器物損壊でクビになった事、ポリダクトリーが自分だった事を話す深馬だが、話が噛み合わない。ポリダクトリーは有名アーティストと大学の合作で街にグラフィティアートを描くものだったし、それに深馬は参加していたではないか、滝川が大学からいなくなったのは画家になる夢を叶えるためフランスに行ったからだと2人は言う。そんなはずは無い、滝川がポリダクトリーの真似事をしている動画も、展覧会の絵を壊した瞬間の動画もあっただろう、真未って女だよ、と深馬は言うが、原田が見せたのは深馬が作品を壊す映像だった。

 

展覧会のシーンに戻る。

モヤモヤしたままの作品を皆で見たあと、深馬はちょっとトイレ、と作品に戻る。スプレーを腕に吹き付け、作品に書き足し、満足したような表情。

 

初めに骨格だけ描いて、描き込まずに寝てしまったグラフィティ。同じように骨格だけ書いて寝てしまうが、このシーンでは客席に背を向けて同じ寝相で寝ている。ムクリと起きて、まるで子どもみたいな表情で真未が書いていた部分を深馬が書いている。

 

深馬は真未の痕跡を探す。真未の家のシミを消したスプレーの跡はあるが、真未の痕跡はそれだけで見つからない。頭を抱え、混乱する深馬。

真未との時間を思い出しながら自慰行為をするが、真未が居ないことを確定事項にしているようなものだった。絶頂までいき果てるけど、とても苦しく悲しい自慰行為に見えた。

息が乱れたままスマホを取り出す深馬。

真っ白な服に身を包んだ真未が出てくる。

深馬は杏奈に電話し、これから会えないか?と尋ねる。

 

暗転し、カーテンコール。

 

 

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ここからは自分なりの考察。

【他人からの評価】

深馬は子どもの時から他人に評価され、褒められ、絵を書いてきた。しかしいつからか評価されるのが怖くなり作品を完成できなくなっていた。

入学当初は勢いと湧き上がるようなものが作品に現れていたが、作品への自信のなさか、他人からの評価を気にしている。これは、友人である原田や北見も同じ意見を言っている。

 

真未は主な美術教育を受けず、自分の思うままに描き生きている。言動もはっきりしていて思ったことを思ったように口にする。北見の造形が小学生でも作れるよ、とか、耳障りのいい言葉を並べて詩になるのなら居酒屋の壁だって詩になる、とか。

 

【色】

登場してすぐの深馬は白Tシャツにベージュのチノパン、絵描き用のエプロン(素材は白。絵の具でもそこまで汚れていない。)

 

真未は一貫して黒。ゆるっとしたトレーナーにワイドパンツみたいな。腕にはスプレーを何色も。

 

深馬が真未と関わっていくうちに、深馬の腕にもスプレーの色がつき、服装も黒くなっていく。

いつの間にか深馬の服が黒くなっていて、え、いつの間に?って気がついてからハッとする。色によって深馬と真未の関係性を表しているんだ、と気がつく。

でも最終的に深馬は真未と決別し、杏奈の元へ戻っていく。腕のスプレーも、最初は杏奈に汚れてるよ、と拭かれるのにそこまで気にしていなかったのに、中盤は汚れじゃない、と杏奈に声を荒らげていたけど、終盤はタオルでゴシゴシ擦って拭いていた。まっさらになった手や腕を眺めながら杏奈の元へ戻っていくが、真未は黒い服のまま。

しかし、最後の居酒屋のシーンで深馬が白基調の服でこれまでの出来事が自分の記憶と違うことに気がつき真未の存在を確かめに行く時、最後、真未は真っ白な服に身を包んでいる。

 

【声】

幕が開いた直後の深馬は、柔らかくてふんわりしていて正門くんの雰囲気と同じような印象。北見の電話や写真を撮る時にはふざけるし、杏奈とも穏やかに喋る。

しかし、真未が登場して関わるようになってから声を荒らげたり感情的になることが多い。

真未のはっきりした言動に影響されているからなのか、はたまた、隠していた、押し込んでいた自分が動き出したからなのか?

 

 

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一回見ただけだと伏線の回収も、演出の理由やタイミングも、ステージの表情も全て反芻することが難しい。2度3度見られる方々が羨ましい。配信でじっくり見たら理解が深まるのかもしれないが、生で観劇するからこその動きや表情、空気感があると思うので如何ともし難い。

もし配信されるのであれば、固定の定点カメラだけの配信と演者の表情を追う配信と2パターン用意して欲しい。それくらい密度の濃い作品だった。

 

北見役の松島さん、3人の大学生ノリの芯になっていたように感じる。1番年上だけど、1番大学生だった。杏奈に相談されてずるいよ、って言ったり、杏奈が泣いて慰めようとするけど肩にも頭にも触れられないの、めちゃくちゃ良いやつだった。女遊びはするけど、友達の女には手を出さないの、ほんと良いやつ。

 

原田役の小日向さん、物語が、というか深馬が大きく動く時のキーマンになっているように感じた。へらへらして北見と深馬にくっついている感じはありつつも、自分や他人を分析して客観視できる原田の繊細なところがとっても活きていた。素朴で可愛いらしいキャラクターがご自身の雰囲気にもぴったりだった。

 

どんどんと変わっていく深馬を演じるのが正門くんであることがすごく誇らしかったし、この作品が終わって、他の作品に出演した時の正門くんがどうなっているのか想像すると、とんでもない役者に化けるんじゃないかとドキドキする。

 

深馬に取り憑かれていたけれど、カーテンコールで見せた表情がいつものぽやぽやの正門くんで可愛かった。

次は夏松竹で会おうね。